間もなく警察の人が部屋を訪ねてきた。
玄関を開けると、おまわりさんが「お嬢さんが今朝交通事故で・・・」と言ったので
「あぁ、よかった。見つかったんだ。さぁ病院へ行かなくちゃ」と思った。
でも、続く言葉は「即死でした」というものだった。
泣き叫ぶこともなく「・・・即死なんですか」と、普通に会話をしていた。
頭の中は、何がなんだかわからなくなっていた。
確認のために一緒に警察に来てくださいと言われたけれど、先にお父さんに電話をさせてもらった。
「真奈が交通事故で頭を轢かれて即死だったって…」と。
お父さんが「本当に真奈なのか？」と言った。
「警察の人が持ってきた鍵が真奈の鍵だったもの…。これから警察に確認しに行くことになったの」
と答えた。
この時から感情が麻痺していたと思う。とても冷静に行動していたように思う。
 夢なのだから、夢の中の時が過ぎ 夢が醒めれば、昨日に戻ると信じていた。もう一度、バスと飛行機を乗り継ぐところまで戻ると思っていた。
パトカーで警察署に着いてもすぐに対面はできなかった。
頭を轢かれていて顔をすぐに遺族には見せられないので少し待っていてくださいと、会議室のようなところに通された。
待っていた時間が長いのか、短いのかさえもわからなかった。
対面できる用意ができたとのことで、階段を下りて別棟の安置室に入った。
机の上に衣類や靴が並べられていた。
「見覚えはありますか？」と聞かれた。
全て見覚えのあるものだった。
パーカーもパンツも、靴も…。
パーカーは実家で預かっていた冬物の中から二日前に送り返したばかりのものだった。
そのパーカーが血で汚れていた。
ここに並んでいる衣類は真奈のもので、血がつくようなことになってしまったのは本当に真奈なんだ…と思った。
棺の中の真奈の顔を確認することになった。
顔のほとんどは包帯で覆われていて鼻から下の部分しか出ていないし、いつもの真奈の顔とは全然違っているほどに傷ついていた。
あんなにも綺麗な歯で、何日か前に歯医者さんに褒められたと言っていた自慢の歯は折れて欠けていた…
少しだけ出ていた頬にそっと手を当ててみた。
冷たくて、いつものふっくらと柔らかな頬ではなかった…。
真奈、痛かったね
ごめんね、遅くなって・・・
一人ぽっちで心細かったね
真奈…、真奈…
どうしてこんなことに…なんて思うこともなく、ただただ痛そうで、可哀相でならなかった。
こんな見知らぬところに寂しがり屋の真奈が、一人ぽっちでいなければならなかったことがたまらなく悲しかった。
抱きしめてやりたくても、棺の中でそれも叶わなかった。
いつまでもその場についていたかったのに…、気が付いたら元の会議室にいた。
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高校の友人は就職して地元を離れている人も多いだろうから、以前に住んでいたところでも連絡がつくかどうかはわからない…。